ヤッホー!暮らしの往復書簡vol.40 熟語

2021.09.08

コラム

これは、私が佐那河内村の隣、神山町に住むフードフォトグラファー・近藤奈央(こんどうなお)さんとの公開往復書簡です。日々の暮らしの中で思ったこと、気づいたことをお互いのブログでお手紙のように伝えていきます。近藤奈央さんのサイトhttps://magewappa-bento.com/

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なおさん。こんにちは。

前回のお話の中で

純粋な表現を追求していくと、それが饒舌な伝達として機能する

とありました。これって以前にさかのぼりますが、まさに「アート」たるものだろうと思います。「無題」というタイトルをつける作者について語りましたよね。

これもまた以前話したことがあると思いますが、私には、書道の先生と絵画の先生がおりましたが書道の先生は言葉で説明されました。

絵の先生は、二人とも油絵画家で、絵を描き進めて先生に教えてもらう時、先生は

「ちょっとどいて」

といって筆を走らせ

「こんな感じ」

以上。でした。言葉による説明はほとんど受けたことがありません。書道も、筆使いを見て学ぶなど言葉を介さない学びも確かにありましたが、絵は顕著でしたね。

投げかけていただいたお題について たくさんの切り口で書きたいことがあって悩んでいたのですが、

「熟語」ということで書きたいなと思うことがありました。

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海を眺めながら(宿毛湾)

先日、嬉しい出来事がありました。私の後輩で同じ書道教室に通っていた女性が、先生から雅号をつけてもらったというのです(彼女とは仕事を通じて知り合いましたが、お互いに書が好きという共通点がみつかり、彼女も私と同じ教室に通うことになった経緯があります)。

仕事の合間の週末に、自宅から遠い教室まで通い続けて、書展にも出品するようになり、機が熟して号を得て、作家として歩み始めるという。なんとも感慨深くて。

下のお名前が「あずさ」さんと言うのですが、号は「桑梓(そうし)」となられたそうです。

号は、自分の本名にちなんだ漢字を用いることが多いですが、彼女の場合もこれに従って「梓(あずさ)」という文字を使われています。

先生が、「梓」にちなんだ故事熟語等を探す中で見つけたのが「桑梓(そうし)」。

調べてみると以下のような意味がありました。

《昔、中国で、屋敷の垣根に桑と梓(あずさ)とを植え、養蚕や器具用として子孫に残したという「詩経」小雅・小弁の故事から》父母を敬い、ふるさとを思うこと。 転じて、ふるさと。 故郷。 ーーーコトバンクより

桑と梓という植物を2つ重ねた二字の熟語ですが、

その奥に、「父母を敬い、故郷を思うこと」とい意味があるとは、思いませんよね。

これをハイコンテクストとは言わないと思いますが、古い時代より私たちは短い言葉や単語の中に、奥深い意味合いを込めて使ってきた生活史があるのだと知らされました。

意味合いが深まり熟すから「熟語」っていうのでしょうか?

にしても素敵な言葉に出会いました。

ではまた。