書道合宿

2021.07.18

コラム

6月末、那須に書道合宿に行ってきました。作品づくりのために日常を離れるのは、作家にとって大変重要なことです。遊びじゃないの?と言われそうですが、はい、真なる遊びだと思っています。(「遊」についての考察はこちらへ

上空から富士山が顔を出しているのが見えた

先生たちと合流する前に少しだけ時間があったので、大好きなshozo cafeに立ち寄りました。

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今の時代に書き表したいと思ったのは老子道徳書。

なぜ老子なのか?と聞かれましたが、簡単にいうと以下の通りです。

半年ほど前に淡路に出向いた時、その土地の方に勧められた彼の著書「ガイアの法則」を読んでから目の前の世界が変わったように思います。後に「タオの暗号」を読み、ここに書かれていることを、私なりになんらかの形で時代に明らかにしたいと強く思ったのです。老子道徳書の奥義を知りたい方は、「タオの暗号」をぜひ読んでみてください。

さて、合宿先につきました。先生のセカンドハウスです。色々と身の回りの準備や片付けから・・・と思ってゴソゴソしていると、先生方が「あなたの仕事は作品を作ることだ!」と、身の回りのことや食事づくりまで、すべて先生がやってくださったのです(御歳80オーバーですが)

恩師に甘えながら、最初の一節を書きました。

個人的には草書を交えて少々狂気のあるものにしようと思いましたが、先生方と相談し、言葉の真意を伝えるためには読みやすい行書で、癖や変化球は不要で淡々と書くのがいいだろう、ということになりました。

少し工夫した点は、改行です。文章の切れ目とは違いますが、右4行を6文字、中3行を5文字、後半5行を4文字としました。

あれこれ悩みながら2日目に仕上げたのがこちらです。

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篆書による一字書にも作りたかったので、次はこちら。老子道徳書の一説から一文字だけ取り出しました。

さて、なんという文字でしょう?右側に目の形のようなものがありますね。

習作1

漢字一文字を書くときは、白川静氏の「字統」で調べ、意味合いを心に留めてから形にしていきます。

白川静氏 「字統」から

字統によれば、この文字の意は、目の上に呪飾をつけて省道(除霊をし、正しい道を開くような行為)をしている様子を表しているとのこと。文字の左下の部位「心」の部分は、元来はなく、後世につけられたものだということもわかりました。

これらのことから、私は「目」の部分に注目しながら習作を重ねました。

私の場合、一字書は書くほどに意図的な作品になってしまい、不自然になっていくのが自分でもわかります。そんなときはお茶をして、人によっては散歩をしたりタバコを吸ったりして 自分の空気が変わるまで、作品から離れます。

那須高原の森

画家や音楽家、小説家にしても「アイディアが”降りてきた”」と表現される方がいますが、書道家もそうです。

あるとき、自分ではない何かが降りてきて勝手に筆を進めるように書いてくれる時があります。偶然なのか必然なのか、私にもわかりません。

最後に書いた1枚はこちらです。

完成した一文字書

ちょっと何かの次元が変わったでしょうか?この場が与えてくれた空気に感謝。

我流(エゴ)を捨て真っさらな気持ちで正しい文字を書くと、時空を超えた力を享受できます。

私はそう感じているので、皆さんにおすそ分けしたくて作品を作っています。教室を開いてみなさんと書く行為をしている理由も同じです。字の奥にある魔法に、本当は誰でもたどり着けるのです。

一緒に書きたい人は書きましょう。


10月の展覧会まで、後2ヶ月と少し。

できたら・・・阿蘇、高千穂で出会った言葉を認めることができたらと思っています。

高千穂神社
高千穂峡

ではまた次の作品でお会いしましょう!